ナンセンス漫画

かつて、ナンセンス漫画というジャンルがあった。まだ大人向けと少年向けのマンガ雑誌が分かれていた頃で、大人向けの「週刊漫画サンデー」などがその主戦場だった。やがて劇画というストーリー性の高いジャンルが登場し、ナンセンス漫画は影が薄くなってい…

『村上春樹風に「ゲイ」について語る』(おちゃらけ擬文)

『村上春樹風に「ゲイ」について語る』(おちゃらけ擬文) 完璧なゲイなどといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。六月にデートした女の子とはまるで話があわなかった。僕が南極について話している時、彼女はゲイのことを考えていた。ゲ…

【太宰治 どうにか、なる】

【太宰治「どうにか、なる。」】 「よい仕事をしたあとで 一杯のお茶をすする お茶のあぶくに きれいな私の顔が いくつもいくつも うつっているのさ」 「どうにか、なる。」 太宰治「葉」より こういう文章を書かせたら、太宰は抜群だな。そういえば、まだ太…

【ジョージ秋山追悼】

【ジョージ秋山追悼】 ジョージ秋山といえば「浮浪雲」で有名だが、漫画家としての彼の変身を3段階みてきた。60年代後半に少年マガジンなどで「ほらふきドンドン」「デロリンマン」といったギャグ漫画を連載し、注目していた。 当時は大学生などが平気で少年…

『ペスト』アルベール・カミュ

『ペスト』アルベール・カミュ(新潮文庫/Kindle版) 初めて電子版で書籍を読んだ。小説も読まなくなって何年にもなるが、さらにモニター画面で読むと、かつての読書という感じとは異なる。とりあえずダウンロードして読み始めたが、どれだけボリュームがあ…

『村上春樹風に「無」について語る』

『村上春樹風に「無」について語る』(また、おちゃらけ擬文を作ってみたくなったw) 完璧な「無」などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。 六月にデートした女の子とはまるで話があわなかった。 僕が南極について話している時、彼…

【戦後ショービジネスと風俗小説 / 肉体の門】

【戦後ショービジネスと風俗小説 / 肉体の門】 1947年8月 新宿・帝都座で初演された空気座による「肉体の門」の大ヒットは、その後の軽演劇に大きな影響を与えた。 戦後のパンパン(米兵などを相手にした娼婦はこう呼ばれた)風俗を描いた田村泰次郎作の小説…

【和田誠氏追悼】

【和田誠氏追悼】 和田誠氏の、しゃれた軽いタッチで人物の内面まで映し出すようなイラストが好きだった。私の好みの本と氏のイラストの相性が良いのか、若い時に購入した本の装丁は和田誠氏のものがたくさんある。 その一冊に「お楽しみはこれからだ」とい…

【「敏感っ子を育てるママの不安がなくなる本/長岡真意子著」書評】

【「敏感っ子を育てるママの不安がなくなる本/長岡真意子著」書評】 https://www.amazon.co.jp/敏感っ子を育てるママの不安がなくなる本-長岡-真意子/dp/4798057142 いわゆる「子育てハウツー本」という形での出版だが、中身はそれ以上のものがある。もはや…

【トキワ荘の青春】

【トキワ荘の青春】 映画『トキワ荘の青春』をテレビBSでやっていた。盟主手塚治虫がアパートを去った後も、慕って集まる若手漫画家たちの兄貴分として、みんなの面倒をみた寺田ヒロオを本木雅弘が演じて、主人公として描かれている。 https://ja.wikipedia.…

「クレーの絵本」谷川俊太郎

「クレーの絵本」谷川俊太郎 本棚の奥から、こんな絵本がでてきた。「クレーの絵本」で谷川俊太郎の詩が添えられている。1995年発行。 クレーの絵は、メルヘンぽいシンプルな形象の奥に、不思議な世界の謎を突きつけてくる。 リルケ、カフカなど、この時期の…

『Get Back! 60’s ビートルズとわれらの時代』(別冊太陽 s57刊)

『Get Back! 60's ビートルズとわれらの時代』(別冊太陽 s57刊)より 1960年代(s35〜s45)はまさに高度成長の只中であり、さまざまな社会・文化現象が展開された時期である。 そして団塊の世代(s22-24生れ)が、小学高学年から高校卒業に至る時期。おんぼろ木造…

【絵本のプレゼント】

【絵本のプレゼント】 孫娘の二歳の誕生会をやるので来てくれと、次男ところから連絡があった。さて、誕生日プレゼント無しの手ぶらというわけにもいかず、久しぶりに本屋に寄った。 学生時代に同居していた、兄とこの甥っこにも、金のない時のアイデアで絵…

【本棚の隅にあった古い本から】

【本棚の隅にあった古い本から】 本棚を久しぶりにいじっていたら、こんな本が出てきた。『近代詩人集』、新潮社刊の世界文学全集の中の一巻で、奥付を見ると、なんと昭和五年五月発行となっている。西欧著名詩人のアンソロジーで、目次を見ると、知らない詩…

【漱石における”明暗”】

【漱石における"明暗"】 漱石は、本格的に作家としてやっていくために、朝日新聞に籍を置いて「虞美人草」を書いた。恋愛というエゴと、日常の打算というもう一つのエゴのせめぎ合いを、藤尾という女性キャラに照らし合わせて、分光してみせた。 それまでの…

【「悲しみよこんにちは」とよもやま話】

【「悲しみよこんにちは」とよもやま話】 NHK BSプレミアムで「悲しみよこんにちは」をやっているのを観た。フランソワーズ・サガンの原作も昔よんだが(もちろん朝吹登水子訳でw)、映画は1958年英米合作で、セリフは英語。モノクローム・ベースで、回想シ…

【『火垂るの墓』 野坂昭如原作小説とジブリ・アニメ版】

【『火垂るの墓』 野坂昭如原作小説とジブリ・アニメ版】 二年前にFacebookに書いたものが、浮き上がって来たので再掲してみる。 >> テレビでジブリ・アニメ『火垂るの墓』やってたので観た。どう見ても、お涙ちょうだい風に見えてしまうね。 実は初版のハ…

【ロートレアモンとシュルレアリスムとの偶然の邂逅】

【ロートレアモンとシュルレアリスムとの偶然の邂逅】 ”Salvador Dalí - Sewing machine with umbrellas” シュルレアリスムを語るときに、必ず引き合いに出されるロートレアモン伯爵の一節「解剖台の上での、ミシンと雨傘との偶発的な出会い(のように美しい…

【江戸川乱歩 没後50年】(2015. 8記)

【江戸川乱歩 没後50年】(2015. 8記) NHK ETV特集「二十の顔を持つ男〜没後50年・知られざる江戸川乱歩〜」を観た。 乱歩に出会ったのは中学生の頃、少年向けポプラ社の「怪人二十面相」シリーズ。その後、家の物置に講談社探偵小説全集が転がっている…

【京都・文学散策4】

【京都・文学散策4】 〇京都・文学散策10.雁の寺・等持院・紫野>水上勉『雁の寺』 岸本南獄が死んだ日の前日、…… 衣笠山麓にある孤峯庵(こほうあん)の住職、北見慈海が訪ねてきた。…… 「どうや、どんなあんばいや」 慈海和尚は、玄関に出た顔見知りの女中…

【京都・文学散策3】

【京都・文学散策3】 〇京都・文学散策7.二条后・芥川>『伊勢物語』六段 昔、男ありけり。女のえ得まじかりけるを、年を経てよばひわたりけるを、からうじて盗み出でて、いと暗きに来けり。芥川といふ河を率ていきければ、草の上に置きたりける露を、「かれ…

【京都・文学散策2】

【京都・文学散策2】 〇京都・文学散策4.紫野・賀茂の祭>『今昔物語集』巻二十八第二「頼光の郎等共、紫野に物見たる語」 今は昔、摂津守源頼光朝臣の郎等にて有りける、平貞道・平季武・坂田公時と云ふ三人の兵有りけり。・・・ 然て、紫野樣に遣らせて行…

【京都・文学散策1】

【京都・文学散策1】 〇京都・文学散策1.八百卯・丸善書店>梶井基次郎『檸檬』 どこをどう歩いたのだろう、私が最後に立ったのは丸善の前だった。平常あんなに避けていた丸善がその時の私にはやすやすと入れるように思えた。 「今日は一つ入ってみてやろう…

【金閣炎上 水上勉と三島由紀夫】

【金閣炎上 水上勉と三島由紀夫】 *1950.7.2 [京都] 金閣寺が放火で全焼する。 1950年7月2日の未明、国宝の鹿苑寺舎利殿(金閣)から出火、金閣は全焼し、舎利殿に祀られた足利義満の木像など国宝・文化財もともに焼失した。不審火で放火の疑いありと捜索中…

夏目漱石『坊っちゃん』と藤村操の「巌頭之感」

夏目漱石『坊っちゃん』と藤村操の「巌頭之感」 漱石は明治39年から、「ホトトギス」に『吾輩は猫である』を連載中で、その好評に意を強くして、『倫敦塔』『坊つちやん』と立て続けに作品を発表する。夏目金之助漱石は東京帝大卒の超エリート英文学者として…

フランケンシュタインと英語の絵本

【フランケンシュタインと英語の絵本】 『フランケンシュタイン "Frankenstein"』は、イギリスの小説家メアリー・シェリーが1818年に匿名出版したゴシック小説であり、SFやホラー小説の先駆でもある。原題は『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメ…

【三島由紀夫と男と女・右脳と左脳】

【三島由紀夫と男と女・右脳と左脳】 いま手元に三島由紀夫著「文章読本」というのがある。粗末な紙の印刷で、古本屋の店頭ならべてあったのを50円で買ったものだ。奥付には、昭和34年1月号「婦人公論」の別冊付録となっている。「不道徳教育講座」というエ…

高野悦子『二十歳の原点』

【高野悦子『二十歳の原点』】 NHK「かんさい熱視線」(2/10)で、高野悦子『二十歳の原点』が取り上げられた。50年近くたった今でも、読まれているというのが驚きだ。 半世紀近く前、学園紛争や反体制活動の狭間で、社会活動と個人の恋愛などの葛藤に悩み自殺…

梶井基次郎『檸檬』

【梶井基次郎『檸檬』】 「えたいの知れない不吉な塊が私の心を始終おさえつけていた」 『檸檬』はいささか大仰な書出しで始まるが、当時すでに肺病を発症し、それに伴う発熱や神経衰弱に悩まされていた梶井基次郎の鬱屈した不快な心境を表わしたものだろう…

アンソロジー『奇妙な味の小説』

【アンソロジー『奇妙な味の小説』】 手元に、吉行淳之介編『奇妙な味の小説』というアンソロジーがある。1971年初版で写真のような黒一色のクロス装丁、透明なビニールカバーが掛かっていたと思うが、すでに取れて今はない。 全16編の短編リストを挙げる。…