2014-01-01から1年間の記事一覧

’69/12/08『空間が笑う時』

『空間が笑う時』君は知っているだろうか 空間が笑うことを 最終まぎわの電車の 外界から切り取られた空間 表情を失った仮面たちは 口をきくすべも忘れている 風の吹き抜けてゆく停車場で モーターの音が止まったときの 奇妙な沈黙の一瞬 そのとき カラカラ…

’69/11/25『バッハはわらう』

――バッハはわらう――まっ黒な影法師の 口のあたりがニッと裂け やつは走り去った 無意味な謎をのこして――バッハはわらう―― ぼくは何かを理解しようと 思いつめてあゆむ 靴に下ではプラタナスの葉が ひとあしごとに厚くつもり ついに一面の雪景色 おもわずぼく…

『小野小町と小町伝説について』2/2

今から、種々の小町伝説を取り上げて先に分類した歌と結びつける作業に移るわけであるか、残念なことに私の手元にはほとんど資料がない。たった一冊だけあることはあるのであるが、それが資料として利用するには甚だ心もとないものである。手の内を見せてし…

『小野小町と小町伝説について』1/2

(S47年度前期、国文学特殊講義レポート/23歳) なぜ小野小町を取り上げるか、ということから始めようと思う。 小野小町という名を聞いて、まず私の頭に浮ぶのは絶世の美女というイメージである。何々小町と言えば美女の代名詞となっており、いつの世の男性…

’69/12/03『カライドスコオプ』

――どうか映像に 意味を求めないでください――人生の木の葉は落ちる落ちる どこまでも長い旅路をゆく キャラバンがオアシスを求めて 地底にもぐる雪の日の 熱さと同じように… ハレムの主人が笛を鳴らすと 夜が明けて南の空が自転する 星空にひび割れが始まると…

’69/11/30『工場の昼休み』

ぶくぶく肥ったミイラが 井戸に小石をほうり込むとき 工場では昼休みのサイレンが鳴りわたり 安心してミイラは床につく 忘れられた小石だけが 沈黙の闇を落ち続けてゆくのは だれもが無事に 弁当たべるため だれもが無事に 昼寝するため('69/11/30 21歳 雑…

’70/03『くるみのうた』

街に夕やみが せまるころ 山ではくるみの 実がおちる 恋人たちは 涙して 川のながれを つくりだし ぽっかり浮かんだ くるみの実 やがておまえも 海へでるの 街に夜あけが せまるころ 海ではくるみの 実がしずむ ('70/03 21歳/雑記ノートより)

『海と毒薬』遠藤周作

『海と毒薬』遠藤周作 太平洋戦争中、撃墜された爆撃機の搭乗員であった米軍捕虜が、ひそかに生体解剖の実験対象にされたという衝撃的な事件が、終戦後明らかになった。この事件を題材にしたことは間違いないが、著者はこれをセンセーショナルな題材として扱…

’70.03.10『夢をみたい人たちのためのバラッド』

あなたたちが消えていったあの山のかなたから、白々しい太陽が顔をのぞかせます。 紫色の雲にねぼけまなこをこすりつけながら顔をもたげる太陽の、間のびした姿をごらんなさい。そうです、これが夜明けの姿なのです。 夜明けと言うと希望にみちた出発を思い…

【過去の雑記帳より(1969/02/01全学集会)】

【過去の雑記帳より(1969/02/01全学集会)】 FACEBOOKで高野悦子『二十歳の原点』が話題になっている。この日記自体は読んでないのだが、同年代で同じような場所で過ごした者として、いささか当時の状況を振り返ってみようと思った。その頃の雑記帳に、封鎖…

(’00/07/13) インターネット時代と都市伝説

インターネット時代と都市伝説 「デジ委書庫」に掲載している拙論、『現代伝説考』http://www.eonet.ne.jp/~log-inn/txt_den/densetu1.htmを見て某誌ライターよりインタビューの依頼があった。「インターネット時代になぜ都市伝説が流行るのか」というテーマ…

(’90)芥川龍之介――『羅生門』と『鼻』にみる「意識」

芥川龍之介――『羅生門』と『鼻』にみる「意識」 (1990年ごろに書いたものです。今ならこういう書き方はしないと思うが、一つの思考過程として。) 芥川龍之介は『鼻』を漱石に激賞され、当時の文壇に認められる機縁を得たとされている。漱石は龍之介にあて…

(’98/04/06)『「内面」の終焉 』

「内面」の終焉 ――酒鬼薔薇少年にみる現代の精神風土―― これは1998年の4月に書いたものです。『文芸春秋』3月号に検事調書が掲載され、メディアのあり方について論議を呼びました。直接そのことの可否には言及していませんが、その調書記事に触発されて書い…

(’97/12/30)『マルチメディアがもたらす私たちの暮らしの変革』

マルチメディアがもたらす私たちの暮らしの変革 ――技術やシステムから人々の生活へ――(これは1997年12月に、さる投稿用に書いたものです。 その後どのように変わったか、比較してみるために掲載します。) 1980年、アルビン・トフラーの『第三の波』がベスト…

現代伝説考 一括掲載

『現代伝説考(全)』はこちらで読めます。書籍デジタル化委員会 電子図書館 書庫http://www.eonet.ne.jp/~log-inn/txt_den/densetu1.htm

現代伝説考31

4.水と妖怪 今回の蒐集では、本格的な妖怪の話題は予想以上にすくなかった。その理由のひとつには、先にのべたように現代人の生活環境には妖怪が棲みづらくなっていることが考えられる。水に関連してでてきた妖怪は、水辺に棲む妖怪の代表である「河童」の…

現代伝説考30

3.水と霊・祟り 女性とは特定できない霊や怪異のたぐいをここに集めた。「水」が霊や祟り・因縁と結びつきやすい、といった共通項程度しかさしあたっては思いうかばない。個別の話にあたっていこう。3-1.水の特異空間 『#106-13教会の井戸』 《京都ハリス…

現代伝説考29

2.水と死体 『#423-1死体洗いのバイト』 《死体が浮くかどうかの専門的なお話ではないのですが、「死体洗いのバイト」と共に、「浮いてくるホルマリン漬けの死体を沈めるバイト」という話もあったことを、ふと思い出しました。》 すでに「医学伝説」でのべ…

現代伝説考28 第六章.美女と湖水のフォークロア

第6章.美女と湖水のフォークロア この最終章では幅ひろく「水」に関係する話題を集めた。現代の伝説を取りあげるにあたって、まず第1章「異空間伝説」を中心として現代人の生活空間に焦点をあてた。また第3章「人体と人格のメタモルフォーシス」を核とし…

現代伝説考27

4.著名人・職業柄・県民性 4-1.著名人伝説 特定の著名人が、その個性のただよわせる雰囲気と結びつけられて噂となることもよくあることだ。だれでも知っている有名人であるだけに、ちょっとした笑話として流布しやすいところがある。『#131-2市長選挙に出…

現代伝説考26

3.あやしげな行為 『#35-1入門書を読む執刀医』 《手術台に横たえられた患者の前に、『外科手術入門』という本を持って現れる執刀医、なんてのはタチの悪いユーモアかな(^^;。》 ここでとりあげるのはさきの「変人・奇人」とは異なり、普通の人でありその…

現代伝説考25

2.怪人 『#1-1怪人赤マント』 《むかし小学生のあいだで「赤マント」伝説がありました。なんでも「赤マント」という怪人が電柱の陰などにかくれていて、こどもをさらってゆくというのです。わたしたちはその恐怖におびえました。ついこのあいだ、こんどは…

現代伝説考24 第五章.奇人・変人・怪人伝

第5章.奇人・変人・怪人伝 今回の噂の蒐集できわだった傾向のひとつは、伝統的な妖怪の話題がきわめて少なかったいうことである。明るく透明化された現代社会には、古風な妖怪どもは棲息しづらいのであろうか。別の面から考えれば、現代人にとって妖怪がリ…

現代伝説考23

5.ビジネスと食品 加工食品への不安はこの章のはじめにのべたとおりであるが、その不安の一端には製造販売業者の商業主義への不信があげられるだろう。食品にかぎったことではないが、異常に売れている特定の大ブランドが話題にのぼりやすいという傾向がみ…

現代伝説考22

4.食事行為 食習慣は文化風土によってさまざまである。場所が変われば食べるものも変わるし、調理法・食事作法などもいろいろ違ってくる。特に外国ともなれば、自分たちと大幅に異なる食習慣が笑い話の素材になりやすい。すでに紹介したなかにも、犬を食べ…

現代伝説考21

3.インチキ食品 この章のはじめの「不気味な食品」もインチキ商品の系列であろうが、ここではそのような不気味さの少ないものを取りあげる。不気味ではないだけに滑稽ばなしの傾向が強い。『#112-1毒のないフグ?』 《今から数年前のある朝、通天閣のすぐ…

現代伝説考20

2.人肉食品 『#37-1人肉ソーセージ』 《ソーセージ工場では、作業員がよく指をハネ落とされるそうです。たかが指の先っちょ一つで何トンもの肉を無駄にする訳にはいきません。もちろん、「人肉入り」てな表示もいたしません(^^;。 指を落とした作業員には…

現代伝説考19 第四章.食の怪

第4章.食の怪 食事行為というものは生殖行為とともに、人間が自らの自然性・動物性と直面するひとつの場面である。日常の自然から切り離された生活のなかでふと生々しい自然と向き合う時間、それが食事行為のもう一方の側面でもあろう。それが逆に日常生活…

現代伝説考18

6.人形 人形も人体変形の一部として取りあげてみよう。人形とはまさに「ヒトガタ」であり、人の身体を模したものである。となれば、ただの物体ではなくわれわれはそこになんらかの精神性を移入して取り扱うことになる。 ヒトガタは古来から呪術の対象であ…

現代伝説考17

5.人体異常 なにかの要因で人体に異常現象がおこるという系列の話をここに集めた。この種の話には「だれにでも起こりうる」という共通の不安が下敷きになっていると考えられる。もっともたくさん出てきた話題が「ピアスの白い糸」であった。これは若い女性…