2017-02-01から1ヶ月間の記事一覧

【人体のメタモルフォーシス06「人形」】

人形も人体変形の一部として取りあげてみよう。人形とはまさに「ヒトガタ」であり、人の身体を模したものである。となれば、ただの物体ではなくわれわれはそこになんらかの精神性を移入して取り扱うことになる。 ヒトガタは古来から呪術の対象であり、人間は…

【人体のメタモルフォーシス05「人体異常」】

なにかの要因で人体に異常現象がおこるという系列の話をここに集めた。この種の話には「だれにでも起こりうる」という共通の不安が下敷きになっていると考えられる。もっともたくさん出てきた話題が「ピアスの白い糸」であった。これは若い女性にはきわめて…

【人体のメタモルフォーシス04「異形の人」】

「首なしライダー」の話題でふれたように、奇形をあつかった噂は一般に差別や排除とむすびつきやすい傾向がある。ある種の「徴つき」の人々を、「異人」として外部に排除する性向である。あるいは自分達の側の内部がはらむ異常性への不安も、奇形への恐怖の…

人体と人格のメタモルフォーシス04-06

【人体と人格のメタモルフォーシス04-06】

【人体のメタモルフォーシス03「人体の部分」】

人体断裂という直接的な状況がなくても、人体の一部がそれだけで存在するというのはグロテスクで不気味なものである。この系列の話題には、部分として「手や腕」の多いのが特長的だった。人間の手というものは人体の中でももっとも活動的で機能的な箇所であ…

【人体のメタモルフォーシス02「人体消滅」】

このテーマも人体断裂系の話の延長線上に位置づけられるであろう。人体断裂は直接的な痛みだったが、ここでは人体そのものが消滅するという恐怖が付加されてくる。まずは、いささか滑稽味のある話から。 『人の熔けたキャラメル』 《 これも何人かの方が書か…

【人体のメタモルフォーシス01「人体断裂」】

『ネックレスひったくり』 《 ある人が香港でひったくりにあった。ネックレスは切れずに首が切れた。 (去年か一昨年、香港旅行計画中のOLから、旅行代理店の人の話として聞いた)》 人体の一部分がちょん切れたり切り取られたりするのは、物理的生理的な…

人体と人格のメタモルフォーシス01-03

【人体と人格のメタモルフォーシス01-03】 われわれは、自分の躯については「健常」であってほしいと願っているはずである。その躯が変形したり断裂したりする場合の恐怖と不安が、ここで取りあげる「人体変形怪談」の原点にあるとおもわれる。 さらに、人間…

【現代カー伝説04「車とジンクス」】

車が高速で移動するかぎり事故はつきものである。そして事故を避けたいという人間の心理は、現代人に神頼みをもさせる。交通安全祈願のお札はだれの車にもぶら下がっているはずである。さらには、なにげなく飾っているミラーマスコットのたぐいにもそれなり…

【現代カー伝説03「移動する霊・妖怪」】

<高速伴走するお化け> 事故にかなならずしも関係しなくとも、車にまつわる霊や妖怪は登場する。古典的な妖怪に「べとべとさん」というのがあるそうだ。ひと気のない山道などを歩いていると、ペタペタと足音がついてくる。振り向いてみてもなにも姿が見えな…

【現代カー伝説02「妖しげな事故」】

高度に発達した交通機関では、思いもよらない変な事故も起こりえる。ここでは、通常の交通事故以外のあやしい出来事を取りあげてみよう。普通ではありえない荒唐無稽な話でも、「ひょっとしたら」と思わせる可能性がわずかでもあれば噂は語りつたえられてい…

【現代カー伝説01「事故と霊」】

高速に移動すれば、当然事故も頻発するし事故死者もでる。となれば、事故と霊にまつわる噂が多いのはうなずけることである。事故多発地点には、かならずなにかが「でる」。 『事故多発地点での白い霊』 《 おまけですが、当時、私の通っていた大学の演劇部に…

現代カー伝説01-04

【現代カー伝説01-04】 現代社会にかかせない文明の利器といえばまず自動車があげられる。自動車の特性はいうまでもなく高速な移動を可能にした点であるが、噂の生成という観点からはその密室性をはずすわけにはいかない。「異空間伝説」の章でもふれたよう…

【異空間伝説08「二次元空間」】

<鏡の中> この章の最後でとりあげるのが「平面の世界」である。なかでも鏡は、古来より神秘的なものとして崇められてきた。写真や映画のなかった時代には、そっくり自分の姿かたちを写すものはおそらく鏡しかなかったであろう。自分と同じ姿が映るのは考え…

【異空間伝説07「密室の世界」】

<民家・アパート> 一般の住居にも怪異にまつわる話はたくさんある。借家・アパートなどで、あらたに移り住んだところ霊がいたという流れの話が多いようだ。 『二階の部屋にモノの気配』 《 秋田市銀の町の家 妹夫婦が,秋田に転勤して,たってから少したっ…

【異空間伝説06「異国・異界・境界」】

<外国> 『試着室ダルマ』のところでふれたが、主人公の若い女性はヨーロッパなどの都市の試着室からつれ去られ、東南アジアやアラブ世界などの第三世界でダルマとなって発見されることが多い。ここで、われわれ日本人が抱く「外国」には、対称的な二つのイ…

【異空間伝説05-3「縁切り伝説」】

この節で最後に取りあげるのが「縁切り伝説」のある特異空間である。その場所で男女カップルがデートをすると縁が切れるという噂であって、特にストーリーのある伝説というよりはほとんどジンクスに近いものである。まずは有名な井の頭公園の別れ伝説の紹介…

【異空間伝説05-2「自殺の名所」】

自殺者の集中するメッカとでもいうべき場所が各地にたくさんある。投稿の話題に出てきただけでも三原山・華厳の滝・青木ヶ原・東尋坊などなど、ふるくから自然の自殺の名所がいくつもある。それらの投稿でもふれられているが、自殺が自殺を呼び寄せるという…

【異空間伝説05-1「特異な空間」】

ここで取りあげるのは、明確に仕切られた閉鎖空間ではないが、ほかとは違った特異な現象がみられるような空間である。まずは、荒唐無稽な噂の引用からはじめてみよう。 『超能力研究所』 《 所謂「深夜ドライブ」ネタ。 「狭山湖周辺を深夜ドライブしている…

【異空間伝説04「劇場系」】

劇場やライブハウスといったパーフォーマンス空間には、やたらに霊や怪異現象の噂が多い。ほとんどすべての劇場にひとつやふたつの怪異譚があるといってもいいだろう。とりあえず「でる」といわれる劇場の報告を羅列してみよう。 『東京青山劇場に*でる*』 …

【異空間伝説03「医学伝説」】

いうまでもなく医学関係は、病気という生死の境界をとりあつかう世界である。しかも現在では、大半の人間がその死を病院でむかえるような状況となっている。とすれば、そのような死とむかいあう病院・医療関係に、多くの怪談があるのに不思議はない。 そのう…

【異空間伝説02-2「寮・下宿」】

学生などの寮や下宿も、同年輩の単身者が同じようなつくりの個室で生活するという同質性をもっている。若者のひとり暮らしということでそれなりの孤独感が強いであろうし、自殺者なども比較的でやすい環境にある。また同じような構造の生活空間にあるという…

【異空間伝説02-1「学校の怪談」】

学校の噂話が、一冊の書物にもなるぐらい(*1)たくさんあることには注目すべきだろう。全国の公立小中学校はほぼ同じような造りになっていて、そこに同年齢の同質的な生徒たちが長時間をすごしている。かつての伝説をうみだした閉鎖的な地域共同体が崩壊した…

【異空間伝説01-3「風呂場」】

裸になる場所といえば当然風呂場があげられる。風呂場には、温泉や公衆浴場のように多数がいっしょにはいる公共性のあるものと、家風呂のように個別性をもったものとがある。前者は密室とはいえないが、後者はトイレとならんで個室性・密室性をもったプライ…

【異空間伝説01-2「トイレ」】

トイレという場所も、部分的にであれ肌をあらわにする密室である。今回の投稿にはトイレに関する噂は比較的少なかったが、古くには、カワヤの神さまが現れるとか河童にシリコダマをぬかれるといった数多くのカワヤ伝説があった。この河童伝説と関連がありそ…

【異空間伝説01-1「試着室」】

おもえば人が身にものをまとうという行為は、人間が他の動物と分かたれる文化的原初のひとつであろう。とすれば、人は衣服を脱ぎ裸になるとき、日常性の中で隠ぺいされている遠い原初の秘密をかすかに想い起こすのかもしれない。いまこの秘密を正鵠にいいあ…

【マインドフルネス】

【マインドフルネス】 「マインドフルネス」という言葉が、ぽつぽつと散見されるようになった。グーグルなどの先端企業が、社員のストレス解消やリラクゼーションに推奨するなどから評判を呼び、日本でもビジネス書籍などから紹介されるようになっている。 …

高野悦子『二十歳の原点』

【高野悦子『二十歳の原点』】 NHK「かんさい熱視線」(2/10)で、高野悦子『二十歳の原点』が取り上げられた。50年近くたった今でも、読まれているというのが驚きだ。 半世紀近く前、学園紛争や反体制活動の狭間で、社会活動と個人の恋愛などの葛藤に悩み自殺…

梶井基次郎『檸檬』

【梶井基次郎『檸檬』】 「えたいの知れない不吉な塊が私の心を始終おさえつけていた」 『檸檬』はいささか大仰な書出しで始まるが、当時すでに肺病を発症し、それに伴う発熱や神経衰弱に悩まされていた梶井基次郎の鬱屈した不快な心境を表わしたものだろう…

アンソロジー『奇妙な味の小説』

【アンソロジー『奇妙な味の小説』】 手元に、吉行淳之介編『奇妙な味の小説』というアンソロジーがある。1971年初版で写真のような黒一色のクロス装丁、透明なビニールカバーが掛かっていたと思うが、すでに取れて今はない。 全16編の短編リストを挙げる。…