「現代伝説考」

現代伝説考 一括掲載

『現代伝説考(全)』はこちらで読めます。書籍デジタル化委員会 電子図書館 書庫http://www.eonet.ne.jp/~log-inn/txt_den/densetu1.htm

現代伝説考31

4.水と妖怪 今回の蒐集では、本格的な妖怪の話題は予想以上にすくなかった。その理由のひとつには、先にのべたように現代人の生活環境には妖怪が棲みづらくなっていることが考えられる。水に関連してでてきた妖怪は、水辺に棲む妖怪の代表である「河童」の…

現代伝説考30

3.水と霊・祟り 女性とは特定できない霊や怪異のたぐいをここに集めた。「水」が霊や祟り・因縁と結びつきやすい、といった共通項程度しかさしあたっては思いうかばない。個別の話にあたっていこう。3-1.水の特異空間 『#106-13教会の井戸』 《京都ハリス…

現代伝説考29

2.水と死体 『#423-1死体洗いのバイト』 《死体が浮くかどうかの専門的なお話ではないのですが、「死体洗いのバイト」と共に、「浮いてくるホルマリン漬けの死体を沈めるバイト」という話もあったことを、ふと思い出しました。》 すでに「医学伝説」でのべ…

現代伝説考28 第六章.美女と湖水のフォークロア

第6章.美女と湖水のフォークロア この最終章では幅ひろく「水」に関係する話題を集めた。現代の伝説を取りあげるにあたって、まず第1章「異空間伝説」を中心として現代人の生活空間に焦点をあてた。また第3章「人体と人格のメタモルフォーシス」を核とし…

現代伝説考27

4.著名人・職業柄・県民性 4-1.著名人伝説 特定の著名人が、その個性のただよわせる雰囲気と結びつけられて噂となることもよくあることだ。だれでも知っている有名人であるだけに、ちょっとした笑話として流布しやすいところがある。『#131-2市長選挙に出…

現代伝説考26

3.あやしげな行為 『#35-1入門書を読む執刀医』 《手術台に横たえられた患者の前に、『外科手術入門』という本を持って現れる執刀医、なんてのはタチの悪いユーモアかな(^^;。》 ここでとりあげるのはさきの「変人・奇人」とは異なり、普通の人でありその…

現代伝説考25

2.怪人 『#1-1怪人赤マント』 《むかし小学生のあいだで「赤マント」伝説がありました。なんでも「赤マント」という怪人が電柱の陰などにかくれていて、こどもをさらってゆくというのです。わたしたちはその恐怖におびえました。ついこのあいだ、こんどは…

現代伝説考24 第五章.奇人・変人・怪人伝

第5章.奇人・変人・怪人伝 今回の噂の蒐集できわだった傾向のひとつは、伝統的な妖怪の話題がきわめて少なかったいうことである。明るく透明化された現代社会には、古風な妖怪どもは棲息しづらいのであろうか。別の面から考えれば、現代人にとって妖怪がリ…

現代伝説考23

5.ビジネスと食品 加工食品への不安はこの章のはじめにのべたとおりであるが、その不安の一端には製造販売業者の商業主義への不信があげられるだろう。食品にかぎったことではないが、異常に売れている特定の大ブランドが話題にのぼりやすいという傾向がみ…

現代伝説考22

4.食事行為 食習慣は文化風土によってさまざまである。場所が変われば食べるものも変わるし、調理法・食事作法などもいろいろ違ってくる。特に外国ともなれば、自分たちと大幅に異なる食習慣が笑い話の素材になりやすい。すでに紹介したなかにも、犬を食べ…

現代伝説考21

3.インチキ食品 この章のはじめの「不気味な食品」もインチキ商品の系列であろうが、ここではそのような不気味さの少ないものを取りあげる。不気味ではないだけに滑稽ばなしの傾向が強い。『#112-1毒のないフグ?』 《今から数年前のある朝、通天閣のすぐ…

現代伝説考20

2.人肉食品 『#37-1人肉ソーセージ』 《ソーセージ工場では、作業員がよく指をハネ落とされるそうです。たかが指の先っちょ一つで何トンもの肉を無駄にする訳にはいきません。もちろん、「人肉入り」てな表示もいたしません(^^;。 指を落とした作業員には…

現代伝説考19 第四章.食の怪

第4章.食の怪 食事行為というものは生殖行為とともに、人間が自らの自然性・動物性と直面するひとつの場面である。日常の自然から切り離された生活のなかでふと生々しい自然と向き合う時間、それが食事行為のもう一方の側面でもあろう。それが逆に日常生活…

現代伝説考18

6.人形 人形も人体変形の一部として取りあげてみよう。人形とはまさに「ヒトガタ」であり、人の身体を模したものである。となれば、ただの物体ではなくわれわれはそこになんらかの精神性を移入して取り扱うことになる。 ヒトガタは古来から呪術の対象であ…

現代伝説考17

5.人体異常 なにかの要因で人体に異常現象がおこるという系列の話をここに集めた。この種の話には「だれにでも起こりうる」という共通の不安が下敷きになっていると考えられる。もっともたくさん出てきた話題が「ピアスの白い糸」であった。これは若い女性…

現代伝説考16

4.異形の人 「首なしライダー」の話題でふれたように、奇形をあつかった噂は一般に差別や排除とむすびつきやすい傾向がある。ある種の「徴つき」の人々を、「異人」として外部に排除する性向である。あるいは自分達の側の内部がはらむ異常性への不安も、奇…

現代伝説考15

3.人体の部分 人体断裂という直接的な状況がなくても、人体の一部がそれだけで存在するというのはグロテスクで不気味なものである。この系列の話題には、部分として「手や腕」の多いのが特長的だった。人間の手というものは人体の中でももっとも活動的で機…

現代伝説考14

2.人体消滅 このテーマも人体断裂系の話の延長線上に位置づけられるであろう。人体断裂は直接的な痛みだったが、ここでは人体そのものが消滅するという恐怖が付加されてくる。まずは、いささか滑稽味のある話から。『#57-5人の熔けたキャラメル』 《これも…

現代伝説考13 第三章.人体と人格のメタモルフォーシス

第3章.人体と人格のメタモルフォーシス われわれは、自分の躯については「健常」であってほしいと願っているはずである。その躯が変形したり断裂したりする場合の恐怖と不安が、ここで取りあげる「人体変形怪談」の原点にあるとおもわれる。 さらに、人間…

現代伝説考12

4.車とジンクス 車が高速で移動するかぎり事故はつきものである。そして事故を避けたいという人間の心理は、現代人に神頼みをもさせる。交通安全祈願のお札はだれの車にもぶら下がっているはずである。さらには、なにげなく飾っているミラーマスコットのた…

現代伝説考11

3.車とともに移動する霊・妖怪3-1.高速伴走するお化け 事故にかなならずしも関係しなくとも、車にまつわる霊や妖怪は登場する。古典的な妖怪に「べとべとさん」というのがあるそうだ。ひと気のない山道などを歩いていると、ペタペタと足音がついてくる。振…

現代伝説考10

2.妖しげな事故 高度に発達した交通機関では、思いもよらない変な事故も起こりえる。ここでは、通常の交通事故以外のあやしい出来事を取りあげてみよう。普通ではありえない荒唐無稽な話でも、「ひょっとしたら」と思わせる可能性がわずかでもあれば噂は語…

現代伝説考09 第二章.現代カー伝説

第2章.高速移動する密室・現代カー伝説 現代社会にかかせない文明の利器といえばまず自動車があげられる。自動車の特性はいうまでもなく高速な移動を可能にした点であるが、噂の生成という観点からはその密室性をはずすわけにはいかない。「異空間伝説」の…

現代伝説考08

8.二次元空間8-1.鏡の中 この章の最後でとりあげるのが「平面の世界」である。なかでも鏡は、古来より神秘的なものとして崇められてきた。写真や映画のなかった時代には、そっくり自分の姿かたちを写すものはおそらく鏡しかなかったであろう。自分と同じ姿…

現代伝説考07

7.密室の世界7-1.民家・アパート 一般の住居にも怪異にまつわる話はたくさんある。借家・アパートなどで、あらたに移り住んだところ霊がいたという流れの話が多いようだ。『#122-3二階の部屋にモノの気配』 《秋田市銀の町の家 妹夫婦が,秋田に転勤して,…

現代伝説考06

6.異国・異界・境界 6-1.外国 『試着室ダルマ』のところでふれたが、主人公の若い女性はヨーロッパなどの都市の試着室からつれ去られ、東南アジアやアラブ世界などの第三世界でダルマとなって発見されることが多い。ここで、われわれ日本人が抱く「外国」…

現代伝説考05

5.特異空間 5-1.特異な空間 ここで取りあげるのは、明確に仕切られた閉鎖空間ではないが、ほかとは違った特異な現象がみられるような空間である。まずは、荒唐無稽な噂の引用からはじめてみよう。『#32-2超能力研究所』 《所謂「深夜ドライブ」ネタ。 「狭…

現代伝説考04

4.劇場系 劇場やライブハウスといったパーフォーマンス空間には、やたらに霊や怪異現象の噂が多い。ほとんどすべての劇場にひとつやふたつの怪異譚があるといってもいいだろう。とりあえず「でる」といわれる劇場の報告を羅列してみよう。『#130-1東京青山…

現代伝説考03

3.医学伝説 いうまでもなく医学関係は、病気という生死の境界をとりあつかう世界である。しかも現在では、大半の人間がその死を病院でむかえるような状況となっている。とすれば、そのような死とむかいあう病院・医療関係に、多くの怪談があるのに不思議は…