’70.03.10『夢をみたい人たちのためのバラッド』

―夜へのあこがれのとき―

あなたたちが消えていったあの山のかなたから、白々しい太陽が顔をのぞかせます。
紫色の雲にねぼけまなこをこすりつけながら顔をもたげる太陽の、間のびした姿をごらんなさい。

そうです、これが夜明けの姿なのです。
夜明けと言うと希望にみちた出発を思いうかべる人たちを、ぼくたちは笑ってあげましょう。
ぼくたちの待っていたのはいつでもこのように、かわいたかわいた夜明けなのです。

からからにかわいた風が春のほこりを舞いあげてゆくなかを、
ぼくたちは幽かなほほえみをうかべて歩いてゆくでしょう。
片手にはリンゴ、もう一方にはくだものナイフを携えて………

(21歳/早春/雑記帳より)