現代伝説考23

人力で動いてる?・・・

5.ビジネスと食品
 加工食品への不安はこの章のはじめにのべたとおりであるが、その不安の一端には製造販売業者の商業主義への不信があげられるだろう。食品にかぎったことではないが、異常に売れている特定の大ブランドが話題にのぼりやすいという傾向がみてとれる。マクドナルド・味の素・コカコーラといったブランドがよく俎上のせられるが、売れすぎるのは「何かあやしい」と感じられるのであろうか。

『#277-1コーラを飲むと骨が溶ける』
《ええと、コーラの話で思い出したのですが、コーラには中毒性が有るって話と、骨が溶けるって話は良く聞きますよね?
 私が聞いたのは、アメリカには、一日数リットルものコーラを飲み続けたあげく、百数十キロまで太り、骨も溶けて満足に歩けない程になった少年(当時十代だったそうです)がいて、そうなってしまうと、仕事につく事も出来ないし、体のあちこちが悪くなっていて、長生きもできそうに無いので、残りの人生は、自分を見せ物にしてお金を稼ぐ事にした、とゆー話です。
 曰く「コーラを飲むとボクみたいになってしまうと言うことを、皆に教えたいのだ」 …でも、そんなになっても、本人は、コーラを飲んでるそうです。(もう手遅れだし、中毒してるし)》
 コーラの原液の製法が厳格な機密で守られているといったあたりから、この種の噂が発生するのであろうか。ほかにも、「味の素伝説」とでもいうべき有名なものもある。

『#111-6頭の良くなる味の素』
《■27年ほど前、大阪豊中市
私が小学校低学年だったかな…? 大阪豊中市での話ですが、「味の素」(商品名がまずければ「化学調味料」)を食べさせると頭が良くなるとか言って、毎晩母親は私の口の中に「味の素」のビンでパッパと直接フリこんでいました。効果があったか否か…?》
 心配なのは、なにも加工食品にかぎられたことではない。身のまわりの生鮮食料品にもたくさんの人工がくわえられている。

『#128-3抗生物質入りハマチ』
《大根オロシが癌に効くのは眉唾ものだが、AIDSに対しては、日本の養殖ハマチは抗生物質がたっぷりなので、免疫不全にはまちの刺身を食べれば、感染症への抗生物質の予防投与と同じ効果がある。(数年前、飲み屋のカウンターで聞いた)》
 かつて高級魚であったハマチが、養殖技術の開発によってきわめて身近な魚になったのはいうまでもない。そして、そこには「何かがある」と考えるのは人の常であろう。それが、現代人の脅威であるエイズなどとむすびつけられて現代伝説となる。抗生物質がない時代、結核が死の病とおそれられたころは想像もできない噂である。

 業者の販売努力も噂話の種になる。ここでも味の素の登場。

『#132-7味の素の穴』
《ある化学調味料メーカーAが、販売拡大策を研究した際に採用されたのは、中ブタにあけた穴を大きくすることだった。》
『#135-2味の素の穴』
《えっ、これって実話なんじゃないんですか?? 私が中ブタを大きくした発案者です、という人について聞いたことはないけれど…。》
 「瓢箪から駒」的な発想が、この噂の根強さをささえているのかもしれない。そして、栄光の成功譚の陰には悲惨な失敗例も存在する。

『#151-1こぼれない醤油で販売減少』
《 味の素と逆の話を聞いたことがあります。「醤油メーカが倒れても醤油がこぼれない容器を開発して売り出したが、醤油の販売量がおちたので容器をもとに戻した」というものです。いまになって考えると「もとに戻した」というのがよくわかりませんが、特許で押さえたということかな。》
 都会のど真ん中に突如出現する巨大な蟹、ぎこぎこと動くあの奇っ怪な「蟹道楽」の看板からは、噂話のひとつやふたつが生まれてもおかしくはない。

『#95-1カニ道楽の看板』
《外食産業は競争が激化してきている。特定の食べ物だけで競う段階から一歩進み、全体が食い合いをしているというのです。牛丼、回転寿司、ファーストフードの店も増え、飲み屋のチェーン店なども勢力を拡大し、ぼちぼちつぶれるところが出てきているくらいだ、というのです。とにかく客足を自分のところへ向けるよう、目に見えないところでもみんな頑張っている。
 居酒屋へ食事目的で人を呼んだっていいのです。たとえば、あの「牛丼一筋」のチェーン店だって、それがアダとなり、一度は倒産の浮き目を見ている。
 そこで、知名度をあげるためにカニ道楽はあんなデカい看板を作った。
 ところが、見た目を重視するあまり、足を動かす仕掛けの予算がたりなくなったのだ。
 苦肉の作として採用したのが、自転車を改造して人力で動かす案。カニの裏側に自転車がセットされ、バイトがひたすら漕ぐ。チェーンがタイヤを回す代わりに、カニの足を動かすわけです。
 基本の時給は450円。能率によって上乗せがあるシステム。バイトは”アメ”を活用したモチベーションシステムで、いやでも頑張って漕ぐようになっているわけです。たいていはなんだかんだとおだてられて@1200円以上を貰う。頑張って派手に動かせば宣伝効果が上がるというわけ。それでも店側は、これ以上の設備費、電力費の軽減はない。
 お店は有名になったが、いいことばかりは起こらない。あるバイトが頑張りすぎたためにカニの足が動きすぎて取れてしまい、下を歩いていた通行人に落ちて怪我をさせてしまったのだ。
 当然問題が起る。そしてまずいことには怪我人との話がもめて、不法労働も発覚してしまった。ここへ来て莫大な補償問題に頭を抱えていると言う。》