自作品
【現代カー伝説01-04】 現代社会にかかせない文明の利器といえばまず自動車があげられる。自動車の特性はいうまでもなく高速な移動を可能にした点であるが、噂の生成という観点からはその密室性をはずすわけにはいかない。「異空間伝説」の章でもふれたよう…
<鏡の中> この章の最後でとりあげるのが「平面の世界」である。なかでも鏡は、古来より神秘的なものとして崇められてきた。写真や映画のなかった時代には、そっくり自分の姿かたちを写すものはおそらく鏡しかなかったであろう。自分と同じ姿が映るのは考え…
<民家・アパート> 一般の住居にも怪異にまつわる話はたくさんある。借家・アパートなどで、あらたに移り住んだところ霊がいたという流れの話が多いようだ。 『二階の部屋にモノの気配』 《 秋田市銀の町の家 妹夫婦が,秋田に転勤して,たってから少したっ…
<外国> 『試着室ダルマ』のところでふれたが、主人公の若い女性はヨーロッパなどの都市の試着室からつれ去られ、東南アジアやアラブ世界などの第三世界でダルマとなって発見されることが多い。ここで、われわれ日本人が抱く「外国」には、対称的な二つのイ…
この節で最後に取りあげるのが「縁切り伝説」のある特異空間である。その場所で男女カップルがデートをすると縁が切れるという噂であって、特にストーリーのある伝説というよりはほとんどジンクスに近いものである。まずは有名な井の頭公園の別れ伝説の紹介…
自殺者の集中するメッカとでもいうべき場所が各地にたくさんある。投稿の話題に出てきただけでも三原山・華厳の滝・青木ヶ原・東尋坊などなど、ふるくから自然の自殺の名所がいくつもある。それらの投稿でもふれられているが、自殺が自殺を呼び寄せるという…
ここで取りあげるのは、明確に仕切られた閉鎖空間ではないが、ほかとは違った特異な現象がみられるような空間である。まずは、荒唐無稽な噂の引用からはじめてみよう。 『超能力研究所』 《 所謂「深夜ドライブ」ネタ。 「狭山湖周辺を深夜ドライブしている…
劇場やライブハウスといったパーフォーマンス空間には、やたらに霊や怪異現象の噂が多い。ほとんどすべての劇場にひとつやふたつの怪異譚があるといってもいいだろう。とりあえず「でる」といわれる劇場の報告を羅列してみよう。 『東京青山劇場に*でる*』 …
いうまでもなく医学関係は、病気という生死の境界をとりあつかう世界である。しかも現在では、大半の人間がその死を病院でむかえるような状況となっている。とすれば、そのような死とむかいあう病院・医療関係に、多くの怪談があるのに不思議はない。 そのう…
学生などの寮や下宿も、同年輩の単身者が同じようなつくりの個室で生活するという同質性をもっている。若者のひとり暮らしということでそれなりの孤独感が強いであろうし、自殺者なども比較的でやすい環境にある。また同じような構造の生活空間にあるという…
学校の噂話が、一冊の書物にもなるぐらい(*1)たくさんあることには注目すべきだろう。全国の公立小中学校はほぼ同じような造りになっていて、そこに同年齢の同質的な生徒たちが長時間をすごしている。かつての伝説をうみだした閉鎖的な地域共同体が崩壊した…
裸になる場所といえば当然風呂場があげられる。風呂場には、温泉や公衆浴場のように多数がいっしょにはいる公共性のあるものと、家風呂のように個別性をもったものとがある。前者は密室とはいえないが、後者はトイレとならんで個室性・密室性をもったプライ…
トイレという場所も、部分的にであれ肌をあらわにする密室である。今回の投稿にはトイレに関する噂は比較的少なかったが、古くには、カワヤの神さまが現れるとか河童にシリコダマをぬかれるといった数多くのカワヤ伝説があった。この河童伝説と関連がありそ…
おもえば人が身にものをまとうという行為は、人間が他の動物と分かたれる文化的原初のひとつであろう。とすれば、人は衣服を脱ぎ裸になるとき、日常性の中で隠ぺいされている遠い原初の秘密をかすかに想い起こすのかもしれない。いまこの秘密を正鵠にいいあ…
『空間が笑う時』君は知っているだろうか 空間が笑うことを 最終まぎわの電車の 外界から切り取られた空間 表情を失った仮面たちは 口をきくすべも忘れている 風の吹き抜けてゆく停車場で モーターの音が止まったときの 奇妙な沈黙の一瞬 そのとき カラカラ…
――バッハはわらう――まっ黒な影法師の 口のあたりがニッと裂け やつは走り去った 無意味な謎をのこして――バッハはわらう―― ぼくは何かを理解しようと 思いつめてあゆむ 靴に下ではプラタナスの葉が ひとあしごとに厚くつもり ついに一面の雪景色 おもわずぼく…
――どうか映像に 意味を求めないでください――人生の木の葉は落ちる落ちる どこまでも長い旅路をゆく キャラバンがオアシスを求めて 地底にもぐる雪の日の 熱さと同じように… ハレムの主人が笛を鳴らすと 夜が明けて南の空が自転する 星空にひび割れが始まると…
ぶくぶく肥ったミイラが 井戸に小石をほうり込むとき 工場では昼休みのサイレンが鳴りわたり 安心してミイラは床につく 忘れられた小石だけが 沈黙の闇を落ち続けてゆくのは だれもが無事に 弁当たべるため だれもが無事に 昼寝するため('69/11/30 21歳 雑…
街に夕やみが せまるころ 山ではくるみの 実がおちる 恋人たちは 涙して 川のながれを つくりだし ぽっかり浮かんだ くるみの実 やがておまえも 海へでるの 街に夜あけが せまるころ 海ではくるみの 実がしずむ ('70/03 21歳/雑記ノートより)
あなたたちが消えていったあの山のかなたから、白々しい太陽が顔をのぞかせます。 紫色の雲にねぼけまなこをこすりつけながら顔をもたげる太陽の、間のびした姿をごらんなさい。そうです、これが夜明けの姿なのです。 夜明けと言うと希望にみちた出発を思い…
『喫茶店にて』 小さな喫茶店で、珈琲を飲んでいた。 ぼくの席は店のいちばん奥にあって、まわりは薄暗い。ここからは、ちょうど入り口のところが見渡せる。入口のドアは、白く塗られた木枠ががっしりと組まれており、その枠に、厚そうな一枚ガラスがはめ込…