【大物役者の訃報に接して】

【大物役者の訃報に接して】(2014.12.02)

 高倉健菅原文太という大物役者が相ついで亡くなった。テレビを点けているとご両人の追悼番組がいくつも流れる。


 健さんは「映画役者」と自己認識してたそうだが、映画というものは、「有り得ないことを、いかにも有りそうに魅せるもの」であって、観客もその夢を楽しみに出かける。よって大スターは、民衆の手の届かない場所に存在しなければならない。

 他方でテレビドラマは、「いかにも身近にありそうで、実際には有り得ないこと」を繰り広げる。出演タレントも、すぐ手が届きそうな親しみのあるキャラクターが重宝される。
 

 両者の状況は似ているようで、根本的に異なっている。映画では、観客は騙されることを承知で、それに期待して観にゆく。よって映画館から出ると、その夢からさめる。

 テレビは茶の間で観るので、そこに繋がった身近な世界の出来事として錯覚する。タレントはドラマばかりでなく、バラエティなどにもしょっちゅう顔を出して、続きを演じなければならないし、視聴者はどこまでも騙され続ける必要がある。

 はて、どちらが健全なのであるか。