食の怪01-05

【食の怪01-05】
 

 食事行為というものは生殖行為とともに、人間が自らの自然性・動物性と直面するひとつの場面である。日常の自然から切り離された生活のなかでふと生々しい自然と向き合う時間、それが食事行為のもう一方の側面でもあろう。それが逆に日常生活での自然との乖離を意識させ、無意識のうちに不安がよぎっていくとも考えられる。そして自分が目の前にしている食品の多くは、人手によって複雑に加工されたものばかりである。このような食事行為におけるなにげない不安が、「食の怪」のフォークロアをうみだす内的な源泉と見なしてもよいのではなかろうか。