【髪結いの亭主】”Le Mari de la coiffeuse”(1990/仏)

髪結いの亭主】”Le Mari de la coiffeuse”(1990/仏)

髪結いの亭主 - Wikipedia


 
[予告編] https://www.youtube.com/watch?v=gUDBts3Gbt4
 一種の恋愛映画なんだろうが、何とも不思議な作品だった。覗き見癖のあるオタク風主人公アントワーヌも変だが、彼が見染て妻になる髪結い(理容師)マチルド(アンナ・ガリエナ)も謎だらけ。その過去も内面もほとんど描かれないで、幸せな夫婦生活を10年間も送りながら、唐突に増水した川に飛び込んで自殺するし、その理由も描かれない。それでも何故か、深い印象を残す映画だった。

 「髪結いの亭主」という言葉は、「妻の収入で楽な暮らしをする亭主」を指す日本固有の言い回しかと思ったが、フランスでも同じニュアンスで使われるのだろうか。しかも映画ではあきらかに、マチルドは男性客中心の「理容師」なので、厳密にいえば「床屋」なのだが、原題の ”la coiffeuse” を自動翻訳してみると「美容師」と出る。

 そもそも江戸時代には、「髪結い」と「床屋」があったが、必ずしも今の美容師・理容師とぴったり重なるものではないし、フランスでも理容師と美容師の区別はあるのだろうか。

 いずれにせよ、亭主の変態オタク風アントワーヌが主人公だから『髪結いの亭主』というタイトルになったのだろうが、ラストで謎の自殺をしてしまう妻のマチルドのシーンが劇的である分、マチルド中心の映画だともとらえられる。そんなわけで、「髪結い亭主」とのタイトルには、いささか違和感を感じる。

 そして、他人からはうかがい知れない夫婦の間柄は、なぜか、子供のころ近所に住んでいた「ひょうたん屋」の老夫婦のイメージが重なるのであった(笑) 
http://d.hatena.ne.jp/naniuji/20150904