【瀬戸内寂聴入寂と墓碑銘もろもろ】

瀬戸内寂聴さん入寂と墓碑銘もろもろ】

 

 瀬戸内寂聴さんの訃報が報じられた。特に思い入れがある作家ではないが、いろいろその名を耳にすることが多い人だった。合掌。

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 追悼記事が多くみられるが、さっそく「自身の墓碑に刻む言葉は決めていた」(読売)と報じられた。「愛した・書いた・祈った」というのがそれだと言うことだ。どこかで聞いたことがあると思って確認したら、フランスのモンマルトルにあるスタンダールの墓碑銘に「書いた・愛した・生きた」と書かれているようだ。

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 自分の生涯を、三つの行為でシンプルに記すのはカッコ良いなと思い、自分も考えてみたが「食った・寝た・遊んだ」ぐらいしか思いつかないし、糸井重里の「くうねるあそぶ」のパクリとも言われたくない。寂聴さんも文学者として、情熱的恋愛を主張したスタンダールの墓碑銘は知っていただろうし、あえて真似したわけでもあるまい。

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 西欧では、ギリシャ語で墓碑銘を意味する「エピタフ”epitaph”」の語があり、墓碑銘を刻むという風習が古くからある。日本ではせいぜいが戒名を彫り込んだ墓碑で、辞世の句ないし歌をしたためるという風習はあっても、墓碑に刻むのは一般的ではない。

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 西欧の墓碑銘は、必ずしも偉人の業績を書き記すという狙いではなく、一般的な故人を家族など縁者がしのぶ意味で刻まれることが多い。故人が生前に記したものから、後世の人が考えたものなど様々だが、その文面は含蓄のあるものが多い。>欧米の墓碑銘

 

*「けちん坊の墓」ここに眠る男は薬代のために小銭を出すのを渋り、そして命を失った。彼にもう一度生き返ってほしいと思うが、そしたら彼は葬儀代がいくらかかるか心配することだろう。

 

 誰が考えたか知らないが、墓碑にこんなことを書かれたくなければ、自分で生前に墓碑銘ないしは辞世の句ぐらいは、したためておこう(笑)