【サンダーボルト】"Thunderbolt and Lightfoot"(1974/米)

【サンダーボルト】"Thunderbolt and Lightfoot"(1974/米)

 

 サンダーボルトの異名をとる熟達した銀行強盗(クリント・イーストウッド)と、コソ泥をしながら放浪生活を送るライトフット(ジェフ・ブリッジス)が、変な友情でつながり強盗行脚を続ける。

 

 ベトナム戦争で疲弊した米国社会を背景に、犯罪に熟達した朝鮮戦争世代の中年男サンダーボルトと、ベトナム戦争世代にあたる若者ライトフットによって展開される、アメリカ西部を舞台にした一種のロードムービー

サンダーボルト (1974年の映画) - Wikipedia

 

 イーストウッド自身が朝鮮戦争世代で、派兵されることはなかったが、招集され陸軍に入隊している。そして「サンダーボルト」の30年以上のちに、イーストウッド監督・主演で「グラン・トリノ」を撮っている。こちらでは、朝鮮戦争経験で心に傷を負った、年老いた頑固な退役軍人を演じた。

 

 朝鮮戦争は、米軍が5万人近くの死者を出しながら、結局は北側を押し戻しただけの勝利なき戦争だった。直前の太平洋戦争と、その後のベトナム戦争の間に挟まれて、朝鮮戦争は「忘れられた戦争」とされている。

 

 「忘れたくても忘れられない」ほど、アメリカに社会的なダメージをあたえたベトナム戦争では、ベトナム戦争世代がある種のイメージをもって取り上げられることが多い。それに比して、朝鮮戦争世代が特定の意味を持って語られることは極めて少ない。イーストウッドの映画を見ると、なぜか、そのような「忘れられた世代」としての存在を、あえて主張しているように思える。