10【20世紀の記憶 1908(M41)年】

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10【20世紀の記憶 1908(M41)年】(ref.20世紀の全記録)
 

*5.26/中東 ペルシア砂漠で「夢の大油田」発見! 英国の後押しで、銀行家ダーシーと技術師レイノルズの快挙。


 イラン南西部の砂漠地帯から、大油田が発見された。鉱掘家ウィリアム・ノックス・ダーシーは、英国の先兵として、イラン・カージャール朝から石油採掘権を取得し、苦難の末、中東でも最大級の油田の発掘に成功した。アングロ・ペルシア石油会社が設立されて,この事業を引継ぎ、後に中東石油を支配したセブンシスターズの一つ、ブリティッシュ・ペトロリアムの前身となった。

 この時期、中東に石油の莫大な埋蔵量があることが判明してきており、それまでただの砂漠の地であった中東が、列強の注目を浴びることになる。大英帝国海軍でも、全軍艦の燃料を石炭から石油に切換えを図っており、自動車も普及期に差し掛かるなど、石油が一躍、重要エネルギーとして脚光を浴びた。

 アメリカではゼネラル・モーターズGM)が設立され、一方フォード社では、本格的普及車として名声を馳せた「T型フォード」を発売するなど、本格的なモータリゼーションが始まった。ライト兄弟による有人飛行に成功したばかりの飛行機も、第一次、第二次世界大戦を経て、爆発的に進化してゆく。

 当時、中東一帯を支配下に置いていた老大国オスマン・トルコ帝国は、石油利権を目指す列強に浸食され続けていたが、第一次大戦に参戦して戦敗国となると、一気に分割が進むことになる。現在の中東の混乱は、石油の発見とともに始まったと言える。
 

*10.-/日本 東京の新富座で、泉鏡花の『婦系図』が初演さる。「別れろ、切れろは 芸者のときにいう言葉」

 1897年尾崎紅葉金色夜叉』、1898年徳冨蘆花『不如帰』、1907年泉鏡花婦系図』と、明治期を代表する恋愛物語が発表され、美文や伝統的技法を踏まえた大仕掛けな話が評判を呼んだ。これらは、舞台や映画に適した名シーンがあり、小説以外でも人口に膾炙することになった。


 しかし、西欧の自然主義文学などが紹介され、鴎外、漱石など近代文学の洗礼を受けた作家が登場すると、これらは古臭い世界を背負った作品として、忘れられてゆく。お宮寛一、武雄と浪子、お蔦主税と、その登場人物は有名だが、その物語を詳しく知る者は少ないと思われる。
 

*10.1/米国 「フォードT型」発売。堅牢、操作性にすぐれ、しかも850ドルの低価格で、自動車時代の幕を開く。


 この9月にはゼネラル・モーターズ社が設立され、持株会社によるトラストとして、ビュイック社、キャデラック社などを次々と統合して、全米最大の自動車メーカーとなってゆく。一方の雄フォード社は買収を免れ、T型フォードを発売し大衆車の世界を開いていった。


 フォード社はやがて、「フォードシステム」と呼ばれる大量生産方式を確立し、実用的かつ廉価なT型フォードの普及に努めた。T型フォードは、以後19年間もモデルチェンジをせず、この間実に1500万台を生産、当初価格850ドルを290ドルまで低下させたという。
 

〇この年の出来事

*6.12/日本 細菌学のコッホ来日。かつての弟子 北里柴三郎と再会。

*7.13/英国 第4回オリンピック・ロンドン大会開幕。水泳競技も初登場。

*11.15/中国 清の独裁者、女帝西太后が死去。3歳の溥儀を皇位に就かせたあと。