『Get Back! 60’s / 1960年(s35)』

Get Back! 60’s

 手元に『別冊太陽 Get Back! 60's』(1982刊)という雑誌の特集号がある。1960年代は、政治的には60年安保と70年安保に挟まれた10年間であり、経済的には池田内閣の所得倍増計画など、高度成長が本格的に展開された時期であった。

 そして文化面では、表紙のコラージュに見られるように、ビートルズの来日公演でエレキブームが爆発、ツイッギー来日でミニスカートが普及するなどといったように、若者旋風が吹き荒れた時期であり、サブカルチャーという言葉もこの時期に現れた。

 このような、日本で最初に若者が社会・文化の前面に登場した時期を振り返ってみよう。さいわいにもこの特集号は、年ごとに事件をニュース記事風に集めてあるので、時代を物語るような事件を、別スレッドを立てて拾い上げてみる。
 

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*60's付記
 
 60年代から70年代初めにかけて、多くの若者文化が登場したが、それらを主導したのは必ずしも「団塊世代(1947-49生)」ではない。

 東大全共闘議長山本義隆1941年、サイケのイラストレータ横尾忠則1936年、アングラ天井桟敷寺山修司1935年、状況劇場唐十郎1940年、ジョン・レノン1940年、ポール・マッカートニー1942年、

 エレキギター寺内タケシ1939年、プロテストフォーク岡林信康1946年、フォーククルセダーズ加藤和彦1947年・北山修1946年、
 日本赤軍重信房子1945年、よど号事件田宮高麿1943年、連合赤軍森恒夫1944年・永田洋子1945年。1972年に起こされた「あさま山荘事件」で逮捕された、連合赤軍下っ端だった残党にやっと団塊世代が出て来る。
 

 つまり60年代若者ブームをリードしたのは、団塊世代より5〜10歳年長のお兄さんお姉さん世代であり、むしろ団塊世代は、その「受け手」であり、その後に続いた世代だったのである。

 団塊世代の圧倒的な世代人口のボリュームが、通過していく過程で、さまざまな社会文化現象が引き起こされたが、それは団塊世代が主導的に何かをしたということではなく、その「世代ボリューム」自体が引き起こした現象だったのだ。

 「年金食い逃げ世代」などというのも、せっせと働き年金納付を続けた結果、やっと受取る世代となっただけであって、年金制度の制度設計に関わった訳ではあるまい。

 もちろん、福祉資金が老齢者に重点的に配布され、若年現役世代に過負担となっている制度は改めねばならないが、それは世代論とは別問題である。
 

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『Get Back! 60's / 1960年(s35)』
#そのころの自分# 4月小学6年生に。秋に伊勢志摩へ修学旅行。親しい友達も多く、活発な最終学年をすごした。

 
○1月「カミュ交通事故で死す」
 ジャン=ポール・サルトルと並び、戦後フランス実存主義の旗手とされたアルベール・カミュが事故死、以後サルトル左傾化し、戦後実存主義は一つの転換期を迎えた。カミュは、小説『異邦人』で「不条理」という概念を提示し、その言葉は流行語にもなった。


○3月「衝撃をよんだ青春映画『勝手にしやがれ』」
 一方映画界では、ヌーヴェルヴァーグの代表作とも言われる、ジャン=リュック・ゴダールの『勝手にしやがれ』が登場した。のちの『気狂いピエロ』とともに、まさに「不条理」な若者のヒーロー像を描き出した。


○6月「安保反対全学連デモ 国会構内に突入」「樺美智子さん デモの最中に死亡」
 6月15日 安保阻止最大のデモが国会に突入し、防衛する警察機動隊・右翼団体暴力団等と衝突、この混乱のさ中で東大生樺美智子が圧死する事故が起った。この数日後、安保條約は参議院の議決のないまま自然成立した。10万規模のデモを官邸から見下ろした岸首相は「後楽園球場には平和な民衆が五万と居る」とつぶやいたとか。


○10月「浅沼社会党委員長 暗殺される」
 日比谷公会堂で行われた党首演説会の壇上で、野党第一党社会党党首 浅沼委員長が、18歳の右翼少年に刺殺されるという事件が起った。これは戦後最大の政治テロと言われ、公衆の面前で刺されるショッキングなシーンは、テレビの映像ニュースでも何度も流された。


○12月「池田内閣 所得倍増計画決定」
 安保強行突破の責任をとって岸内閣は総辞職、代って内閣を組織した池田隼人首相は、政治色を払拭するため「所得倍増計画」を発表した。10年間で国民所得を倍増させるというものであったが、実際には6年で達成され、10年後には4倍に成っていた。「貧乏人は麦飯を食え」とか「私はウソを申しません」とか、何かと話題を呼ぶ発言の多い首相であった。

 
以下、60年のおもだった見出しを羅列しておく。

三井三池炭鉱ロックアウトでドロ沼闘争へ」「栃錦-若乃花、全勝で千秋楽決戦」「(チリ沖大地震で)東北、北海道に大津波 死者百三十九人」「(テレビ西部劇)『ララミー牧場』スタート」「(プロレス)馬場、猪木デビュー」「豆炭一個で二十四時間 品川あんか」
 
○1960年(s35) TV人気番組
ララミー牧場」(NET)
「サンセット77」(TBS)
「ライフルマン」(TBS)
「怪傑ハリマオ」(NTV)
「少年ジェット」(フジ)
「ローハイド」(NET・s59より)
「ザ・ヒット・パレード」(フジ・s59より)