リカちゃん人形の悲惨(都市伝説より)

リカちゃん人形

6-1.リカちゃん人形解体

 ひと時代まえに流行した「リカちゃん人形」の例から取りあげてみよう。

『#389-1リカちゃんダルマ』
《母が人形が妙に好きです。ぬいぐるみであれヒトガタであれ、人形をもらうといやに喜びます。
最近、日本人形とフランス人形を一体ずつもらい受けたとかで、ひまがあれば眺めているのだそうです(そういうヒトだと思わなかった。荒っぽい奴なんです、ホントは)。

 彼女が言うに、「よく、人形が涙を流しただの髪が伸びただの言うだろ、もちろんそんなことあるわけないんだけど、たぶんそれは、人形を見る人の、見るときの気持ちの反映なんだろうと思うよ。だって、悲しい気持ちで見ているときは人形も悲しそうに見えるし、腹たってるときは、怒ってるように見えるもん」だそうです。

 いい年をした一人暮らしの女でも、ぬいぐるみの一つや二つは持っているようです。たいてい、各自に名前をつけ、定位置をあたえて、話しかけたり抱いたり頭に載せてみたりしているようです。「えぇ〜、こいつがぁ〜?」と思いたくなるような人に限ってそういうことしてるのは面白い。男の人でも、UFOキャッチャーで取った奴を並べてる人いません? トラックの運転席に、みかん星人とかの人形がずらーーっと並んでるの、ときどき見る。あと、団地やマンションの窓にぎっしりへばりついてるのも。あれは子供がやってるのか。UFOキャッチャーの景品が人形じゃなかったら、あんなにもヒットしただろうか?

 ところでリカちゃんやバービーは、手足がバラバラにとれますよね。子供のころその手の人形で遊んでいて、何の気なしにリカちゃんを「だるま」にしたことのない女の子はいないんじゃないかという気がしてきました。あとよくやるのは、リカちゃんの髪の毛をザキザキに切ってしまうことですね。》

 人形に対する女性心理がよくうかがえる投稿である。それにしても、かわいがっている人形をバラバラにするのには、どのような心性がひそんでいるのであろうか。

『#395-1リカちゃんダルマ』
《お話から、わたしも自分がリカちゃんにしたことをその感触とともに思い出しました。そのなかでリアルに思い起こされたのが、
「リカちゃんと一緒にお風呂に入り、数を数えながら湯船の中でリカちゃんの手足を一本ずつもいでいき、だるまのリカちゃんの空洞にお湯を通して柔らかくし、さらにくねくねとへこます」という一連の作業です。》

 一般に子供たちは、玩具を解体するのが好きである。そのような作業をとおしてなんらかの学習をするのであろう。だが、男の子がガンダム人形のような目的志向性の強い人形を解体するのと、女の子が愛着の深い自分の分身のような人形の手足をもいでゆくのには、いささかの違いが感じられる。

 女の子が人形をだっこしたり寝かしつけたりするのは、母親のものまねであり将来の母親としての学習行為と見なすことはできる。しかしそれ以上に人形は自分の分身であり、自分と二人きりの世界をつくる無二の存在であろう。その分身にあたえる行為は、自分自身の肉体にくわえる行為という意味あいももってくる。自分の躯への加工というところで、先の「ピアスの穴」や整形手術とのつながりが見えてくる。

 男の子が昆虫などの手足をもいだりする残虐さは、なにがしか外部世界へむけられた嗜虐性という要素が感じられる。それに対して女の子の嗜虐は、どこまでも自らの精神と肉体にもぐり込んでいくかのようである。

 リカちゃん人形の「悲惨」の報告はさらにつづく。

『#393-1リカちゃんダルマ』
《リカちゃん人形のお話で思い出したのは、リカちゃん人形研究の第一人者、増淵宗一著『リカちゃんの少女フシギ学』(新潮社・品切)を以前読んだ中で、一章を割いてリカちゃん人形への虐待についての報告が載っていました。増淵氏の勤める大学で女子学生にアンケート調査を実施したところ、半数近くの者が、リカちゃん人形に虐待をくわえているという報告だったと思います。写真入りで、丸坊主のリカちゃん人形や、手足をもがれたリカちゃん人形の悲惨な姿が載っていました。
 小生の妹のリカちゃん人形も、やはり坊主頭になっていましたので、妙に関心して読んだ覚えがあります。会社で、OLさん6人ほどに聞きましたところ、1人だけでしたが、やはり坊主にしてしまったということでした。
 事例としては、化粧をする、胸をつっついて凹ませる、手足をもぐ、首をとる、髪の毛を刈る、などがあがっていました。》

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